データで見るMicrosoftの苦悩──ネット部門は大赤字、OSライセンスは2年連続前年割れ
Microsoftが四半期決算で初の赤字を計上したことが話題になりました。赤字の理由は2007年に買収したネット広告会社の減損処理によるものですが、同社の「悩み」はそれだけではありません。
同社が上場いらい26年で初の四半期赤字を計上したのは、2012年4-6月期(会計年度2012年第4四半期)です。この最新の数字を含む、2006年〜2012会計年度までの同社の業績を表にまとめました。
表 Microsoftの部門別売上高/営業利益(会計年度2006年〜2012年)単位:100万ドル
Microsoftの部門別売上高/営業利益(会計年度2006年〜2012年)のデータ(Google Docs)
ネット広告でGoogleに挑み深手を負う
今回の四半期赤字の原因になった「オンラインサービス部門」の業績を見ると(表中の赤い部分)、2006年いらい一回も黒字化することなく、それどころか赤字幅が毎年拡大する一方です。2011年度の時点で26億5700万ドルという巨額の赤字を計上しています。1年以上前ですが、次のような記事が出ています。
- Microsoftのインターネット大出血はいつ止まるのか?(TechCrunch)
今回の四半期赤字の原因となったのは、ネット広告会社aQuantive社の買収失敗です。Microsoftは2007年5月18日、aQuantive社を60億ドル以上で買収すると発表しています(当時の記事)。
この買収当時の動きを見ると、Microsoftの「焦り」が伝わってきます。
その1カ月前に、大きな出来事がありました。2007年4月13日、GoogleはDoubleClickを31億ドルで買収したのです(当時の記事)。これに対して当時のMicrosoftの幹部は「この買収計画は、オンライン広告に対する空前の支配」をもたらすと警告し「この合併が規制当局による詳細な調査に値するものと考えている」とまで言っています(当時の記事)。DoubleClick買収にはMicrosoftも名乗りを上げていましたが、Googleに買われてしまった訳です。その悔しさが上記の発言につながっているような気がします。元々ネット広告分野で圧倒的な地位を持っていたGoogleは、DoubleClick買収により、その地位をさらに盤石なものとしていきます。
一方、その一カ月後の5月18日にaQuantive社を60億ドル以上とDoubleClickの2倍以上で買収したMicrosoftは、結局ネット事業の黒字化に失敗します。赤字幅の大きさを見ると「Googleに挑んで深手を負った」という印象が残ります。
本業も低成長
そして、この7年間にわたる業績を見て気がつくことは「本業の伸び悩み」です。この間、Windows Vista発売(2007年1月)、Eee PCの登場(2007年11月米国販売開始)によるネットブックのブーム、Windows 7発売(2009年10月)と大きな出来事がありました。しかし、Windows部門(表の青い部分)の売上高を見ると、Windows 7発売の年である2010年度は前年比30.2%と伸びているもののの、2011年度、2012年度と2年続けて前年割れなのです。
背景にはPC市場の低成長があります。PCが1台売れればWindowsが1ライセンス売れる素晴らしいビジネスモデルを同社はエンジョイしてきた訳ですが、逆に言えばPCが売れなければ、もはや伸びしろはありません。今、Microsoftが法人向け営業に力を入れる理由は、一般消費者市場よりは成長率が高いからです。
そして、オンラインサービス部門は前述のように大赤字、エンタテインメント部門の数字も今ひとつで、同社の業績を支えるほどの力強さはありません。PCの伸びが止まれば、同社の伸びも止まってしまう構造になっています。
Microsoftが、Windows 8 / RT搭載タブレット機「Surface」を自社製品として開発し、しかも月産100万台規模の体勢を取ると伝えられている背景には、同社の「悩み」があります。
同社の業績は低成長のPC市場に依存しています。高成長のスマートデバイス市場への参入に成功するか否かによって、Microsoftの明日は大きく変わるはずです。
関連記事:
The comments to this entry are closed.
Comments