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TEDで発禁の講演「金持ちからもっと税金を!」の全文を公開中

世界最高級の頭脳による「スーパープレゼンテーション」をインターネットで無料中継する素晴らしいサイト「TED Talk」で「内容に議論の余地が多すぎる」として非公開扱いとなっている講演があると聞いて、内容を見てみました。

National Journalの次の記事が伝えています。

Too Hot for TED: Income Inequality(National Journal)

講演内容の全文はこちら。

The Inequality Speech That TED Won't Show You

講演スライドはこちら。

The PowerPoint Slides That Were Too Hot for TED

Amazon.comにも投資しているというシアトル在住のベンチャーキャピタリスト(かつ富豪)のNick Hanauer氏(Wikipedia)がこの2012年3月1日にTED University conferenceで行った講演の内容は、次のようなものでした。

「『富裕層への税率を上げれば、雇用は減少する』。長い間広まっているこの考えは、天動説が間違いだったように間違っている」

「米国(米国外でも)の収入の不平等の拡大は悪であり、金持ちはより多くの税金を支払うべきだ」

「資本主義経済では、真の雇用創出者はミドルクラスの消費者だ。富裕層へ増税し、ミドルクラスの成長に投資することが、我々にできる最も賢い選択だ」

米国では、Hanauer氏自身のような富裕層のイノベータ*ではなく*ミドルクラスこそが真の"Job Creators"(雇用創出者)である、というのです。「我々は過去30年にわたり、富裕層のビジネスピープルは雇用を創出しなかった。経済を回してきたのはミドルクラスの消費者たちだ」(Nick Hanauer氏)。

統計資料として、米国では過去30年にわたり、上位1%の富裕層が利益の大半を占有してきたこと、1995年から2009年にかけて富裕層の税率が30.4%から22.4%に下がっているのに対して、被雇用者の税率が5.6%から9.3%に上がっていることを示しています。

Blog_Hanauer_slide1

このほか、1979年から2009年までの30年間にわたり、生産性上昇に比べて平均賃金の上昇率は鈍く、さらに上位1%の富裕層の平均収入は最大2.4倍にも上昇していることを示しています。

Blog_Hanauer_slide2

この講演は「議論の余地がある」として、Webサイトでは公開停止扱いになったとのことです。現時点でTEDのWebサイトで講演者名"Nick Hanauer"や講演タイトルの"Job Creator"を検索しても、検索結果には"No Result"と表示されるだけです。

National JournalのJim Tankersley記者は、当事者への取材で以下のような経緯を明らかにしています。Hanauer氏によれば、「当初、TED運営側はこの動画を公開したいと言っていた」とのことです。4月末時点、Hanauer氏は「この講演を世界中に広めたい!」という前向きなEメールを受け取っています。しかし5月の始め、運営側は方針を変更し、Hanauer氏に「(この講演は)政治的すぎ、議論の余地がありすぎる」と説明したそうです。

National Journalの記事は、TEDが「議論の余地がある」題材を取り上げる場合もあることを指摘しています。例えば、NASAの科学者James Hansen氏による、隕石衝突と気候変動に関する講演(James Hansen: Why I must speak out about climate change)や、Melinda Gates(ビル&メリンダ・ゲイツ財団副会長)の産児制限に関する講演(Melinda Gates: Let's put birth control back on the agenda)も、議論を呼ぶことが明かな内容ですが、講演ビデオが公開されています。

TEDのキュレーターであるChris Anderson氏は、「Hanauer氏の講演とMelinda Gates氏の講演を同時に公開するのは避けたい」とEメールに書いてきたとのことです。そして、Anderson氏は5月初めに、Hanauer氏に「講演ビデオを公開しないと決めた」と伝えてきました。

National Journalの取材申し込みに対して、TEDのAnderson氏はEメールで返答しています。「カンファレンスやTED-Uでの講演の多くは公開されません」としたうえで、「TED.comには1日1本だけリリースしています。驚くべき分量のバックログがあります。我々は公式にはリリースしない理由をコメントしません」。そして、「講演を却下する方針は、明かな政治的主張がある場合、そして聴衆からの評価が悪かった場合です」と述べています。

Hanauer氏の議論が論争を呼ぶ可能性が大きいということは想像に難くありません。また、National Journalの記事は、Anderson氏のEメール内容から、同氏がHanauer氏の主張に嫌悪感を示したようだと書いています。

National Journalの取材によれば、TED運営側の少なくとも1人のスタッフは当初はHanauer氏の講演を広く伝えたと考えていたが、TEDトップのAnderson氏の意向でその方針が変わったものと考えられます。また*National Journal*が指摘するように「議論の余地がある」講演は他にもあります。Hanauer氏の講演を非公開とした経緯の不自然さを、National Journalは追求しています。

私の個人的な感想ですが、TEDが言論機関であるなら、「議論の余地が多く」、かつスポンサー達にとって愉快でない内容であったとしても、講演を「なかったことにする」のではなく、議論の余地を追求してみることも、一つの価値観の示し方ではないかと思います。もちろん、「却下をもって価値観を示す」自由もあるわけですが、その場合は今回の*National Journal*のような批判者が存在することが望ましいと思います。それが言論の自由というものです。

なお、National Journalの記事に触発されて、Slash Gear も取り上げています。

Banned “Tax the Rich” TED Talk slides and text here(Slash Gear)

追記:
コメント欄にて、shiroさんからTEDのChris Anderson氏からの反論が公開されていることを教えて頂きました。リンクを貼っておきます。

TED and inequality: The real story

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Comments

TEDの中の人の言い分はかなりトーンが異なるようですよ。こちらも紹介しておかないとバランス悪いかなと。 http://tedchris.posterous.com/131417405

Posted by: shiro | May 18, 2012 03:59 PM

shiroさん、情報ありがとうございます。追記しました。

Posted by: 星 暁雄 | May 18, 2012 06:55 PM

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