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[取材メモ] IT革命はまだ始まったばかり──Intelの予想「地球上のトランジスタ数は2005年からの10年で200倍に」の意味を考える

IT革命は、実はまだ始まったばかり。過去数十年の蓄積を無視できるほどの新たなコンピューティング・パワーが、あと数年でこの地球上に出現する──。

これは2011年9月13日に行われたIDF2011(Intel Developer Forum 2011)でのIntel 社長兼CEOのPaul Otellini氏の基調講演(Keynote)で語られたビジョンです。

Intelが示したイメージ図

IDF2011WeAreHere

Intelの見積もりによれば、地球上のトランジスタ数は2005年には5 Quintillion(=5×10の18乗)だったのが、2010年には80 Quintillion(=8×10の19乗)、そして2015年には1200 Quintillion (1.2×10の21乗)に膨れあがる、としています。

地球上のトランジスタ数は2005年 5 Quintillion(=5×10の18乗)から 2010年 80 Quintillion(=8×10の19乗)に増大

IDF2011_2010

2015年にはトランジスタ数は1200 Quintillion (1.2×10の21乗)に

IDF2011_2015

スライドにある「x15」「x200」という数字は、キリがいい数字に丸めたということでしょう。

ここで「トランジスタ数」は集積回路の上の素子の数を指す言葉です。地球上の総トランジスタ数とはすなわち地球上の情報処理能力の指標ということになります。

このスライドに注目したきっかけは、先にBlogで「取材メモ」を記したABC 2011 Springでの日本Androidの会の丸山会長による基調講演(クラウドとスマートフォンの時代の新しいルールとビジネス---ABC 2012 Springレポート)です。

下記ページで、IDF2011基調講演の録画を視聴できます。

IDF2011のアーカイブページ

なお、Webメディアが掲載した記事には次のものがあります。

過去数十年に世界中で生産されたコンピュータの演算能力を無視できるほどの新たな演算能力が、いままさに生産されつつある、とIntelは主張しています。半導体メーカーとしては、自社製品の需要はまだまだ伸びる、と言っている訳です。

需要を支えるのは、モバイルデバイス(スマートデバイス)の台頭、それにクラウドコンピューティングの普及に伴うデータセンターの増強です。このキーノートで、多数のAndroidデバイスを紹介したこと、Googleのモバイル担当副社長Andy Rubin氏(つまりAndroidのボスです)をゲストに招いていたことは、Intelとしても、自社プロセッサの売り込み先として、Android搭載デバイスを重要視していることの表れといえます。

Androidの元締め、Andy RubinがIDF2011の基調講演に登壇 IDF2011AndyRubin1

IDF2011の基調講演で紹介されたAndroidデバイスの例 IDF2011Keynote_AndroidDevice1

気になることがあります。プロセッサの主流がどうなるのか、という問題です。

Intelは、長年にわたりPCの世界で主流となっていました。ただし、よく知られているように今のスマートデバイスの主流はARMです。iPhoneも、AndroidスマートフォンもWindows Phoneも、すべてARM搭載。それどころか次期WindowsはARMもターゲットとする、とのアナウンスも出ています。Intelも、自社プロセッサがスマートフォンなど新たなターゲットに使われる事をアピールしない訳にはいかないのでしょう。

地球上のトランジスタ総数が今後急増するとの予想は、私もその通りだろうと思います。ただし、そのトランジスタ総数に占めるIntelのシェアがどうなるのかは、ARMとの戦い抜きには語れません。

エンドユーザーの立場からは、最高水準の製造技術を持つIntelが、ARMアーキテクチャを採用したSoC(System-on-a-Chip)を製造してくれると嬉しい、と思う訳ですが、そう簡単な話にはならないでしょう。

IntelベースのAndroidデバイスがARMベースのAndroidとちゃんと戦えるのかどうか、これはIntelとそれ以外のプロセッサの今後を予想する上で重要な分かれ目になるような気がしています。

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