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Oracleの対Google訴訟にJavaの父Gosling氏が2度目のコメント、「Googleは自由を求め、互換性に注意を払わなかった」

AndroidがJava関連の特許と知的所有権を侵害したとしてOracleがGoogleを訴えた件に関連して、Java言語の設計者であるJames Gosling氏が、2度目のコメントを発表している。

興味深い内容なので、重要な部分を抜き出してみよう。


  • Sunは、防衛のため特許を取得するようになった。IBMがRISCチップの特許に関してSunを訴え、Sunが巨額の損害を出したことがきっかけだ。
  • Sunは(Javaを)最初から完全なオープンソースにはしなかった、といって非難されている。だが、すべての人にとっての自由はありえない。我々が最も注力したのは、ソフトウエア開発者があらゆるOSやハードウエアの上でソフトウエアを実行できる自由だ。その対極にあるのは、プラットフォーム提供者が、そのプラットフォームに可能な限りの粘着性を持たせる自由だ。(注:囲い込みのため、特有のプラットフォームにしかない機能をソフトウエア開発者に使わせて、互換性がないソフトウエアを作ること。特にMicrosoftが同社版のJavaに独自機能を持たせたことを指している)
  • Googleが携帯電話に関する構想(注:Androidのこと)を持って私たちの所に来た時、彼らの一つの原則は携帯電話メーカー向けのプラットフォームをFree(無料、自由)にすることだった。我々はその歴史を通して互換性を強く意識しているが、彼らは互換性についてはわずかな配慮しかしなかった。(略)Android搭載の携帯電話の間には、ソフトウエア開発者の自由を著しく制限するだけの(注:非互換性に基づく)フラグメンテーションが発生している。 

訴訟へのコメントというより、旧Sunへ寄せられた罵声への弁解という雰囲気の内容である。ただ、Gosling氏の主張はJava登場の1995年から変わらず一貫性がある点は、さすがである。ここまで変わることなく強情な人は、IT業界でもまれなのではなかろうか。

注意すべき点は、GoogleとSunがAndroidをめぐり交渉していた事についてのコメントである。ここでは、両社の立場の違いが浮き彫りになっている。Googleは、無償で改変可能な「自由」なプラットフォームを求めてAndroidを作った。Sunは、同社の一貫した主張として、他のJavaプラットフォームとの互換性を求めた。これで交渉がまとまる訳がない。そのときのツケが、今回の訴訟につながった、という見方もできる。

Gosling氏は(そして旧Sunは)Androidは非互換だ、といって非難している。今のAndroidでは、アプリ開発者は異機種対応にかなりの工数を使っていることは事実だ。Sunが求めたような完全なデバイス独立は実現できていない。かといってSunの言うとおりにしていたら、今日のAndroidの急進撃もなかっただろうと思う。数々のJavaベースのデバイス(訂正・追記あり)が登場したが、すべてブレイクせず消えている。結果から見て、Androidは互換性とデバイス対応のかなり良いバランスを実現していると私は考えている。

追記:もちろんJavaを組み込んだ機器は、iアプリ機能搭載の携帯電話やBD-J搭載Blu-rayプレーヤーを始め数多いが、そこでのJavaは主役ではなく脇役だ。SunのJavaStation、PFUのBossaNova、それにSavaJe OS(後のJavaFX Mobile)搭載の携帯電話など、Javaを開発・実行環境の中心に据えたアプライアンスで大きな成功を収めた機器は出ていない。見方によれば、Androidスマートフォンは最初にブレイクしたJavaベースのデバイスといえる。

訂正:「Java搭載デバイス」を「Javaベースのデバイス」に訂正しました。

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Tracked on August 18, 2010 11:32 AM

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