Oracleが「AndroidはJavaの知的所有権を侵害」とGoogleを訴える
米Oracleは2010年8月12日、AndroidがJavaの特許と著作権を侵害しているとして、Googleを訴えた。
Googleがスマートフォン向けOS/開発環境として推進中のAndroidは、Javaプログラミング言語とフレームワークの一部を利用している。一方、Oracleは、Javaプラットフォームを開発したSun Microsystemsを買収したことにより、Javaプラットフォームの著作権と関連特許群を保有する。この訴訟は、Googleにとって大きな負担となる可能性がある。
プレスリリース中で、OracleのKaren Tillman氏は「Androidの開発過程で、Googleは直接的かつ繰り返しOracleのJava関連の知的所有権を侵害した」と述べている。
訴状から、Oracleの主張の一部を抜粋する。「Oracle(が買収したSun)は、Javaプラットフォームの仕様やコードの著作権を保有している。Androidは、これら著作権や特許を侵害している。特許の内容はGoogleが雇用したSun社員により伝わった」。
実際、Javaプラットフォームの仕様書やソースコードには、(c) Sun Microsystemsと記されている。
また、侵害されたと主張する特許は、例えば次のものがある。"US6125447: Protection domains to provide security in a computer system" このようなJavaプラットフォームに関連する基本技術の特許をOracleは大量に保有している。つまり、今後の訴訟に使える持ち駒が多い。
CNETの記事は、実際にSunからGoogleへ移った有名人のリストを挙げている。Google CEOのEric Schmidt氏は、SunからNovellを経てGoogleに参加した。GoogleフェローのUrs Hölzle上級副社長は、Java仮想マシンの開発に重要な役割を果たした人物である。そのほか、大勢の優秀なSunのエンジニアがGoogleに参加している。
ここまでが現時点での事実関係である。Google側のコメントはまだ伝わっていない。以下、個人的な感想をいくつか記しておきたい。
今回の訴訟により、現状のJavaプラットフォームがOracle一社保有のソフトウエアであることが確認されるだろう。Javaプラットフォームは「Open JDK」としてオープンソースにする動きが進行中なのだが、このOpenJDKは広く普及するには至っていない。現時点で多くのエンジニアが使っているJavaプラットフォームに関しては、Oracleが著作権を保有しているのである。
そして、この訴訟は「一社が著作権を保有するソフト」とオープンソース・ソフトウエアの戦いでもある。GoogleのAndroidはApacheライセンスに基づきオープンソースとして公開されている。この訴訟の構図は、UNIXの知的所有権を引き継いだSCOが「LinuxがUNIXの知的所有権を侵害している」としてIBMを訴えた事件と似ている部分がある。
この訴訟に関連して、何が起きるだろうか。Javaの知的所有権をめぐる訴訟では、Sun対Microsoftの訴訟が有名だ。この時にはWindows98出荷差し止め請求(実際には差し止めにはならず)などの大技が繰り出された。実際にWindows98が出荷差し止めになっていたら、MicrosoftやPCユーザーにとっては大きな衝撃があったはずだ。
Javaに関する知的所有権訴訟は、少なくともAndroidの快進撃にストップをかける上で、非常に有効な手段と言わざるを得ない。どのような経緯になるにせよ、今回の訴訟はITの今後にとって重要な意味を持つものとなるだろう。
関連リンク
Oracleのプレスリリース
Oracleの訴状
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