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JRuby開発者Charles NutterがOracleの対Google訴訟を考察、「心配するな。特許は大した内容じゃないし、OracleにはAndroidを潰す動機はない」

オープンソースのJRuby(Java実行環境上のRuby言語処理系)開発者であり、元Sun Microsystyems社員でもあるCharles Nutter氏(現在はSunを離れEngine Yard勤務)が、Oracleの対Google訴訟に関して、Blog上で長文の考察を発表している。

Javaテクノロジとオープンソースに強力な関心、知識、実績を持ち、しかも当事者であるSunの事情も承知していて、現在は第3者の立場にある書き手だ。このBlogは、Oracle-Google訴訟の現状を把握する上では必読である。

一言でいって、Nutter氏は「特許は大した内容じゃないし、OracleがAndroidを潰す動機はない。だから心配するな」と言っている。さらに、Javaに精通するNutter氏は「Androidは素晴らしいプラットフォームだ」と高く評価する。実際、Java上のプログラムとしてはきわめて複雑な部類に入るであろうJRuby処理系がAndroid上で動いている。Androidマーケットで公開されているRuboto IRBと、Google Labsで公開されているScripting Layer for Android (SL4A)である。これは素晴らしい事だと筆者も思う。

以下、大事な部分を紹介する。


  • Googleは、数年前にモバイル・デバイスが次の大きなテクノロジ・マーケットになることを理解した。
  • GoogleとSunは、モバイル・デバイス向けJavaに関して交渉した。
  • Sun側は、まずお金の話から始めた。そして、ダメダメなJavaFX(携帯電話向けJavaプラットフォームであるJavaFX Mobile)の話を持ち出した。Java MEを、Googleが望む形に成長させることには関心を持たなかった。
  • Googleは、新たなプラットフォームを構築することを決心。LinuxカーネルとJavaランタイムという、二つのベストなプラットフォーム技術を「テコの支点」として使うことにした。
  • Javaには特許、著作権、仕様、制約類という難点がある。OpenJDKですら制約がある(訂正:追記あり)。
  • そこでGoogleは新たなVMを構築し、制約がないクラス・ライブラリを利用することにした。
  • Androidのクラス・ライブラリは、Java1.5(Java SE5.0)のサブセット。JRubyを修正なしにAndroid上で実行させるに十分な内容を持つ。
  • Androidは、Java開発者にとって素晴らしいプラットフォームだ。
  • もはや、誰もJava ME上で開発したいとは思わない(私=Nutterも含めて)。
  • Androidでは、Sunのクラス・ライブラリを避けるため、Apache Harmonyのクラス・ライブラリを利用している。
  • Oracleが侵害されているとして挙げた7件の特許の内容を検討したが、特別な新規性はない。笑ってしまうような内容だ。
  • 考えられる最悪の事態はAndroidが完全に破壊されることだが、そうならないだろう。Oracleにその動機はない。
  • Oracleの目的は、和解金かロイヤルティによる収入だろう。
  • Androidを殺しても、Oracleには一銭も入らない。彼らは邪悪だが、愚かではない。
  • むしろ、ソフトウエア特許紛争そのものを終結させる裁判となる可能性がある。
  • Javaプログラマも、Androidプログラマも、とりあえず心配することはない。
  • 追記:Blog公開後に次の指摘を受けた。

    • OpenJDKとAndroidはほぼ同時期に開発が始まっているため、Android開発時にOpenJDKの採用を検討したとは考えられない。
    • Dalvik VMの設計は純粋に技術的な理由によるもので、知的所有権を避ける意図はない。
    • Androidはプロセス分離によるサンドボックス・モデルを採用しており、これはJavaのセキュリティ・モデルとは異なる。
    • もし「最悪の事態」の場合でも、Dalvik VMにはわずかな修正を加えるだけで済むだろう。

関連リンク
Headius: My Thoughts on Oracle v Google

訂正:「GPLで配布されるOpenJDKですら制約がある。GPLで配布されるOpenJDKですら、改変は許されず、ハードウエア・メーカーはバイナリ形式でしか配布できない。にも関わらずサービス提供者にはGPLで公開する義務が発生する。」という一文を「OpenJDKですら制約がある」と置き換えました。お詫びして訂正します。
追記:一部記述を、間違っていたことと、重要性が減じた(原文追記にあるようにOpenJDKがAndroid誕生時に選択肢であった可能性は低い)ため、削除しました。正しくは「カスタマイズしたOpenJDKをバイナリ形式だけで配布できない(ソースを公開する義務がある)」でした。コメント欄でyukoba氏、Twiterにて@mhatta 氏からご指摘いただきました。ありがとうございます。また、原文のコメント欄には「OpenJDKのすべての部分がGPLではない」との指摘も含まれています。

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Comments

原文を見たのですが、
updateが大量に入っていて、原文が変わったかもしれませんが、
GPLの件は、
「GPLであるため、ハードウェアメーカーやサービスプロバイダは、バイナリのみの形態でカスタマイズして出荷することは出来ない。」
という訳ではないでしょうか?

Posted by: yukoba | August 18, 2010 03:14 PM

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Tracked on August 18, 2010 01:42 PM

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