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March 2006

退職とBlog引き継ぎの件

本日をもって,日経BP社を退職します。

今までお世話になった方々には,厚く御礼申し上げます。

今まで,日経BP社のサイトで「星暁雄 × Java」というBlogを書いていたのですが,退職に伴いこのBlogは閉鎖しました。
# 過去のエントリは,アーカイブとして残して頂いています。

この日経BP社のBlogでの議論を,本Blogで引き継ぐことにしました。

過去,本Blogは「仕事以外」のお話に限定していましたが,今後はJava技術やIT全般の話もしていくつもりです。

今後とも,どうぞよろしくお願いいたします。

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何が今,破壊的なのか

先日,何が今破壊的なのか,という事を考えた。

PCは,破壊的だった。

破壊した相手はメインフレーム産業だ。
PCの台頭とIBMの没落は共時性がある現象だった。

オモチャと思われていたPCは,IntelとMicrosoftが開発パワーを注ぎ込んだ結果として急激に能力を上げていき,それは業務システムのハードウエアにおける価格破壊(メインフレームの没落)と,システム構築体系の破壊(要するにクライアント/サーバーの登場)をもたらした。

Javaは,破壊的だった--SmalltalkやNEXTSTEPに対しては。

オブジェクト指向技術は,かつては1台1000万円クラスのXeroxのSmalltalk専用機なり,100万円コースのNEXTなりがなければ手が出せない高級品であり,普通のシステム開発で使えるものではなかった。この状況を変えたのがJava技術だ。

# パトリック・ノートンという元Sun社員の証言によれば,
# Java誕生のきっかけとなったGreen Projectは,
# NEXTSTEPにインスパイアされて誕生したそうである。

Javaは,登場時点ではNetscapeと共にMicrosoft支配を打破する何者かとして期待されていた。しかしMicrosoftはデスクトップにおける覇権の防衛に成功した。
# 攻める方が弱体だったというべきか。

フタを空けてみると,Javaは高額なオブジェクト指向技術を破壊した一方で,破壊されたメインフレーム文化に替わる新たな世代のシステム構築技術体系を生み出すことで(つまりJ2EE),IBMのビジネスを再生させる上で重要な役割を果たした。PCにより壊滅的ダメージを受けたIBMを, Javaが救ったという構図ともいえる。

さてSOA(サービス指向アーキテクチャ)の発想は,まったく破壊的ではない。既存のソフトウエア・ビジネスを保護するように考えられている。IBMもSAPもOracleもSunも,SOAによって利益を上げることが可能なようにシナリオを描いている。

だが,SOAと実は大差ない事をやっているにも関わらず破壊的なインパクトを持つ技術がある。

マッシュアップだ。

無償で提供されているGoogle MapsのAPIを利用することで,数十万円の出費で地図情報システムを作ることができる。梅田望夫氏は「ウェブ進化論」の中で,その破壊性について「数億円が必要だったシステムを数十万円で作れるようになる」と指摘している。

 * * *

ここで視点を少し変える。

LL(Lightweight Language)はどうか。

ライブドアがDVDレンタル「ぽすれん」のシステムを1~2週間で作ったという話を読んで,これは破壊的だ,と思った。品質基準の設定が違うということもあるかもしれないが,それだけではない。彼らが作ったPerlフレームワークSledgeの存在がその背景にはある。

PHPの生産性に驚いた,という中島聡氏のBlogエントリからも,LLは破壊的な技術であるという印象を受ける。

Ruby on Railsはもちろん破壊的。

最近では,未踏プロジェクトの成果報告会で見たTuigwaa(Seasarプロジェクト)は,これは化けるかも,と思った。明らかに破壊的だ。中小企業向けSIのかなりの部分はこれで間に合いそうだ。

Lightweightなプログラミング・モデルと,無償でWebサービスAPIを提供する(=マッシュアップの母体となる)サービス・プロバイダの台頭。これは相当,破壊的な出来事であると感じている。

 * * *

ここまで書くと,気の早い方からは「結局Googleの手のひらの上じゃないか」と言われそうだ。サービスを提供する母体が価値の源泉となり,最強のサービス・プロバイダが支配者となるだけの話ではないかと。

しかしだ。Googleを越えるアイデアを持っている人も,けっこうな人数がいるはずだと思う。

 * * *

梅田氏の「Web進化論」p.223で示される図をご覧いただきたい。そこでGoogleは,中途半端な場所に位置づけられている。「ネットのあちら側」の企業ではあるが「不特定多数の信頼」においてはグレー,という半端さを持っている。

つまり梅田氏は,明示的な言い方ではないにせよ,「Googleよりラジカルな何者か」の可能性を暗に示しているのである。

 * * *

不特定多数を全面的に信頼し,そのパワーを集結せしむるもの。

それは何か。

ガバナンスにおいてはオープンソース・プロジェクトであり,技術としてはP2Pだ。

 * * *

Googleは,頭脳労働者5700人を抱えた閉鎖的な組織で,最終的な意思決定は,事実上2人の創業者が行っている。この点ではMicrosoftと構造はそう変わらない。そのサービスは世界最大のデータ・センターにホスティングされている。
# つまり設備産業的・資本集約的な側面を持っている。

これとは異なる条件で出発することが,おそらくGoogleを越える企業に必要とされる事である。
# P2Pはこの条件をひっくり返す道具になる可能性がある。

以上の話は私にでも思いつくぐらいだから,相当大勢の人間が考えている事だと想定するべきである。

したがって,私は今後,今以上に破壊的な会社,破壊的なテクノロジーが出てくるという予感を抱いている。

テクノラティプロフィール

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